大阪高等裁判所 昭和59年(ラ)335号 決定
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【判旨】
抗告人は、本件免責の申立ては破産法第三六六条の二第一項前段に規定する期間徒過後になしたものであるが、破産者の責に帰すべからざる事由により右期間内に免責の申立てをすることができなかつた場合には同条第五項の定めるところによつて免責の申立ての追完をすることができるものとされているところ、右事由は、同法が免責主義を採用した趣旨に照らしてできる限り緩和して解釈されるべきであつて、本件においては、抗告人が居所としていた居住建物が換価処分されたため抗告人はやむを得ず居所を変えたものであつて、管財人に対してその旨通知するとともに了解を得ていたのであるから、右追完が認められるべきであると主張する。
よつて検討するに、一件記録によれば、次の各事実が認められる。
1 昭和五八年二月七日本件破産宣告の申立てがなされ、同年三月八日本件破産宣告及び破産管財人(弁護士山田康子)選任の決定がなされ、同決定は同日抗告人(破産者)に交付送達されたこと。
2 抗告人は、同年四月八日の第一回債権者集会、債権調査期日には欠席したが、同年五月一三日及び六月一三日の各債権調査期日に出頭して届出債権に異議を述べず、右六月一三日の期日において債権調査が終了したこと。
3 破産管財人においては、同年九月一二日ころ、抗告人の所在を知ることができない状態にあり、同年一一月末ころ抗告人が三重県鈴鹿市内の住所の電話番号を破産管財人宛知らせてきたものの、昭和五九年三月中旬ころには転所により該電話による連絡の途も閉ざされてしまつたこと。
4 同年五月一一日、破産管財人の任務終了による計算報告のための債権者集会を同年六月八日に招集する旨決定され、同決定謄本が抗告人の居所である肩書地に宛てて郵便に付されたが、同年五月一九日、名宛人の転居先不明を理由として返戻されたこと。
5 同年六月八日、抗告人不出頭のまま前記債権者集会が開催され、同年六月一一日破産終結決定がなされ、同決定は抗告人肩書地に送達されたが前記同様の理由で送達できなかつたこと。
6 右破産終結決定は、昭和五九年七月二四日、官報に掲載公告され、破産手続は解止されるに至つたこと。
7 破産宣告の決定から破産終結決定までの間に、抗告人が居住地を離れるについて破産法第一四七条の規定による許可を求め、又は許可がなされた形跡が見られないこと。
8 抗告人は、昭和五九年八月六日にいたつて初めて、本件破産終結決定がなされていることを知り、同日本件免責の申立てがなされたこと。
右認定の各事実によれば、抗告人は、遅くとも昭和五八年六月一三日には届出債権の総額を知り、免責の申立てをすることの当否を容易に判断することができる状態にあつたにもかかわらず、抗告人においてはその後、裁判所の許可を得ることなく、また、破産管財人に対して適切な連絡方法を講ずることなく居住地を離れて所在を転々とし、このため、昭和五九年六月八日に計算報告のための債権者集会が招集されること即ち破産手続が終局段階にあることを知り得ず、この結果、抗告人において破産手続の解止に至るまでの間に本件免責の申立てをすることができなかつたものと認められ、右認定事実に照らすと、本件免責の申立期間徒過につき抗告人の責に帰すべからざる事由があつたとはとうてい認めることができず、抗告人主張の如く、これを緩和解釈すべき余地はない。
よつて、原決定は相当であり、本件抗告は理由がないからこれを棄却し、抗告費用は抗告人に負担させることとして、主文のとおり決定する。
(村上明雄 寺﨑次郎 安倍嘉人)